明け方を染めた朱
AM3時。
名古屋から群馬を目指し中央高速道路に乗ったミニキャブの後部座席で私は目を覚ました。
車はちょうどパーキングエリアに停車していた。
『目も覚めたし、運転代わるよ。』
私はそれまでハンドルを握っていたFxKxDに声をかけた。
すると彼は、
「いや、大丈夫、そんなコトより大変なことが起きた。」
顔色は悪かったがいつものことか…。
「どうやら分岐しそこねた。このままでは8王子に向かってしまうよ。」
何、最後の最期でオチをつけるのか?
と内心おもったが前半運転していたのは私だったので【間違えたのはオレかもしれな
い。】という不安がよぎった。
そこで『分岐しそこねたのはオレかもしれないな。』と心当たりを告げてみたがFxKxDは自分だと言い張った。
しかし、私とFKDが会話している間、終止無言の男がいた。
俺の運転中もFKDの運転中も助手席に座ってナビをしていたはず、の男。
若干の悲壮感を漂わせるものの気を取り直して下道で軌道修正することに。
しかし本当のオチはここからだった。
車は長野と山梨の県境、清里高原のセブンイレブンへ寄った。
そして私はここから再びハンドルを握った。
時計は6時を回った。
明け方を染めた朱は、張り詰めた空気の中で、先ほどの悲壮感を振り払ってくれているようだった。
あたりには広大な畑が広がっている。
風にあたろう、と思い窓を開ける。
間もなく、臭い匂いが漂ってきた。
肥料の匂いだろう。と一人納得し小一時間走り続けた。
ほかのメンバーは寝ていた。
腹が減ったので再びコンビ二で停車。
全員が降りた後、ふと助手席の足元に目をやった。
するとどうだろう。
そこには得体の知れない黒い物体が。
ティッシュにはさんで物体を持ち上げてみる。
臭いの原因はこれか!?
謎はすべて解けた。
私はコンビ二で立ち読みをする哲郎を呼びこう訪ねた。
『てっちゃん、うんこ踏んだか?』
あせる哲郎。
〔いや、おれは踏んでない。〕
ということは…、
『FKD、ちょっと来てくれ』
同じく立ち読みしていたところをよびつけた。
『うんこふんだろ!』
おもむろに足の裏をみるFKD
「ぎゃー」
アスファルトをすり足で駆け回りその物体の排除に懸命。
挙句の果てに
「この靴、捨てようと思ってたからいいんだ。」
と捨て台詞。
それを聞いた哲郎は笑い狂っていた。
〔ここ10年間でこんなに笑ったのは久しぶりだ。〕
と言っていた。
どうやら、うんこの話ばっかりしているとうんこがついてくるようだ。
私にしてみれば うんこを踏んだFKDをみて笑い転げる哲郎が一番面白かった。
そして最大の被害者はうんこを車内に持ち込まれた私だと言う事に二人は気づいていない。
-完-
※写真は本文とは関係ありません